北の水辺で水面や空を眺めての独り言

by kitanomizube
 
何だろうって何だろう?

中学生全員に突然、こんなパンフレットが配布された(ひょっとすると3年だけ??)
「薬害って何だろう?・・何故起こったのか? どうすれば防げるのか?」
発行は厚生労働省
何だろうって何だろう?_c0046416_1424569.jpg

中味を読んで驚いた
「学習ポイント」というのが随所に出てくる
まるで他人事だ・・

何だろうこれは・・と思い、厚労省のHPを見ると
何と、中学校社会科の教材として書かれたらしい
それを何も言わずに配布している・・・のは学校が悪いのか??
配布の仕方が悪いのか??

では中味を解説しよう
P1〜P2は、「薬害って何だろう?」
学習ポイントは「薬害はどのようなものだったか確認しよう」「薬害発生についてどのような共通点があるか考えてみよう」だ
何だろうって何だろう?_c0046416_1452432.jpg

年表の中には、例えば「薬害エイズ」
「国は有効な対策を取らなかったことで被害が拡大しました」とある
「薬害肝炎」では
「国は甚大な被害の発生拡大を防止できませんでした」とある

この国というのは何だろう??
当然薬や防疫に関する責任官庁である厚生省(当時)だろう
つまり現厚生労働省だ
そこが出したパンフレットで、この他人事感は何だろう?

「薬害エイズ」の経緯を見ると
総合開発研究機構(NIRA)のページを見ると
米国で血友病患者のエイズ感染が報告されたのが1982年7月
同年12月には輸血を受けた幼児の感染も報告され
翌1983年1月エイズ予防公開会議開催
3月にエイズ予防に関する公式韓国をPHSが出している
同じ3月、加熱製剤を承認し
5月にはバクスター社が非加熱製剤を回収

1983年6月には、日本バクスター社が厚生省に汚染製剤の自主回収を報告している

同月、厚生省がエイズ研究班設置
にもかかわらず
1984年エイズ研究班は非加熱製剤継続使用勧告を最終報告としている
1985年7月、加熱製剤承認・・にもかかわらず、非加熱製剤の回収指示はなし

これは後に「無作為」と言われることになるのだが、管轄の厚生省が使用を禁止すれば良かっただけのことだろう
これを教えれば良いのかな??
このパンフレットの意味は・・・

米国の製薬会社が回収を報告していると言うことは、危険性を報告したことに他ならない
にもかかわらず、使用を中止させなかったのは、製薬会社が在庫を抱えていた・・という話しと
その製薬会社が加熱製剤の製造で遅れていたので、できあがるまで他の製剤も含めて承認を遅らせていた
という話しがある
どちらにしても、国民のことを考えているとは言い難い

さて、P3〜P4は被害者の声

P5〜P6は、「何故、薬害が起こったのだろう?」だ
学習ポイントは「国、製薬会社、医療従事者は何をすべきだったのか考えてみよう」だ
何だろうって何だろう?_c0046416_1455853.jpg

で、A「国」は「薬の安全性のチェック」B「製薬会社」は「安全な薬の開発、製造、販売後も情報収集と適切な対応」C「医療従事者」は「副作用が起きた場合の報告」D「国民」は「主体的に関わる〜関心を持つ、国などの役割や行動をチェックする)」という4者の責任を書いている

先ほどのNIRAの年表では
1984年9月、帝京大医学部は23人の感染を確認
同年11月、鳥取大は厚生省に血友病患者22人中4人が抗体陽性反応と報告している
つまり医療従事者は責任を果たしていたわけだ

しかし、製造者は何もせずに在庫処分し
国は研究班を造りながらも有効手段をとらなかった

で、国民にも責任があるの??
チェックしなかった??

このページには設問がある
「?」に語句を入れなさいという問題
「社会の仕組みがうまく働いて薬害の発生を防ぐためには、図中のA・B・C・Dがお互いに「?」を共有し、それぞれの役割を果たすために活用する。」
「?」には「薬の副作用や安全性に関する情報」が入るそうだ

どう??
「情報」を持っているのは国と製薬会社だ
この二者が情報を持ちながら流さずにいて、医療従事者は信用して処方して消費者である国民は医者を信じて薬を使う
その二者にも責任があったと言外に言いたいのだろう
情報を「共有」してと書いてあるが
「共有」させなかったのは国だ
つまり当時の厚生省
それが国民にも責任の一部を転嫁させようとする内容ではないの??

こういうパンフレットを出して、厚生労働省は情報を発信し、もし知らないとしたら
国民が情報を得ようと「主体的に関わる」ことをしなかったからだ・・と言いたいのか?
こういうのをアリバイづくりというのではないの?

現在進行中の原発事故も
水俣病も、薬害も
みな同じ構図だ
水俣病は高度経済成長期、工業優先製作の結果だ
1953年に水俣病正式認定
1956年には窒素工場の付属病院が発生を確認している
1959年には熊本大医学部が原因はチッソの工場廃液中の有機水銀だと発表しているにもかかわらず
国は何もしなかった(厚生省食品衛生調査会は厚生大臣に答申しているが)
1968年に厚生省と科学技術庁は原因をチッソの工場廃液だと認めたが、その時はすでにこの廃液を出すアセトアルデヒドの製造を終えていた。
どう?まるで在庫処分を待っているのと同じ構図

情報を得ているのに公表しないのは
原発事故も同じ
文科省のHPにアリバイはあるが・・
これで、国民に主体的に関われと言って何ができるの?
ふざけるのもいい加減にしてほしい

早く正確な情報が公表されていれば
医者は非加熱製剤を使わなかっただろうし
患者も使用を拒んだだろう
水俣の人々は魚を食べるのをやめただろうし
早く保障すれば貧困にあえぐこともなかっただろう
福島県民は、早く避難しただろうし
安全が確認されるまで国が面倒を見ることにもなっただろう
ということだ

まあ、逆説的に教えられる良い教材という風に評価されたいのかな・・・・・

by kitanomizube | 2011-06-12 14:06 | 政治
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