北の水辺で水面や空を眺めての独り言

by kitanomizube
 
蟹工船

昨年来、話題になっている本に
蟹工船がある

各出版社から、様々な形で出ているし、文庫本も多様。
この写真は、初版本の表紙をモチーフにしている。
蟹工船_c0046416_2251176.jpg

最も安価なのは角川文庫かな(^_^;)
角川は、最近、新装し、雨宮 処凛が書評を書いている。

発表されたのは昭和4年(1929年)だから世界恐慌の年。
そして治安維持法が施行された(1925年)後だから、勤めていた北海道拓殖銀行を解雇されたという。

「斡旋屋に引っ張り回されて、文無しになってよ・・・」「学生は十七、八人来ていた。六十円を前借りすることに決めて、汽車賃、宿料、毛布、布団、それに斡旋料を取られて、結局船へ来たときには、一人七、八円の借金(!)になっていた・・」
八十年前の出来事を書いた小説が、現在、現実として存在する。
怖いおじさんたちの商売だった斡旋屋が、派遣会社と名前を変えて、同じ事をしている。
派遣社員として働けるだけ働いても、雇い止めされた瞬間に無一文のホームレスになり、自宅に帰る旅費すらない・・というのは、今や白日の下にさらされている事実だ。
蟹工船の時代、駆逐艦(軍隊)が見方について、この酷い搾取をさせていたのと同様、国家が資本家のために法律を改正し、労働者の実に三分の一以上を、この八十年前の境遇に貶めたのだ。
正規雇用の社員とて、何も変わらない。戦後最高の利潤は一部の資本家(経営者と株主)の懐と企業の内部留保になり、労働者へは一つも分配されなかった。
身分が安定していると言われる公務員でさえ、争議権剥奪と引き替えに設置された人事院は国の顔を見た勧告しか出さず、しかもその勧告さえ無視し続けている国や自治体である。
これが民主国家といえるのか??

今、一番酷い目に遭っている非正規労働者は、三ヶ月ほどで職場を転々としていたため、選挙権もないという。
これは重大な憲法違反ではないのか??

雨宮 処凛は、「知らないうちに、私たちは蟹工船に乗っていた・・」と、書いているが、まさにその通りだろう。

多喜二の時代のように、今更コミンテルンを目指すことはないだろう。
が、少なくとも、時代錯誤な搾取を許す「新自由主義」は許してはならない。
「新自由主義」の行き着くところは、結局、かのアメリカが示したように戦争を仕掛けても利潤を追求することにあるのだから。

現在の日本が、資本家の行き過ぎた搾取を許し始め、しかも憲法改正や再軍備を堂々と口にする政治家がはびこる状況を見ると、蟹工船の時代と何が違うのか・・・と、感じてしまう。
まさに戦前になっているのではないのか??
そこに持ってきて、世界恐慌なのだから・・・

過去の教訓を思い出すためにも、蟹工船は読むべきだろう。

by kitanomizube | 2009-01-03 22:05 |
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